原著は、サミュエル・スマイルズ(イギリス)により1858年に出版された。300人以上の欧米人の成功談がその内容となっている、古典的名著である。
日本では明治4年に、その日本語訳が「西国立志編」として出版され、大ベストセラーとなった。序文の「天は自ら助くる者を助く」という言葉は有名である。本書は、福井県出身で地球物理学の世界的権威、故・竹内均氏(東大名誉教授・理学博士)がその「西国立志編」を訳し直したものであり、非常に平易な文章で読みやすい。
この本が書かれた頃のイギリスは、世界最強の国であり、この最盛期のイギリスを支えたのは、自助の心をもったイギリス国民であった。ニュートン、ベーコン、ワーズワース、シェイクスピア、ディズレーリ、スコット、ジェンナーといった同国のあらゆる分野の偉人や他の欧米人も含め、成功者たちがどのように考え、どう行動したかが、これでもかというぐらい挙げられている。
「人生に暇な時間はない」「無心の自己修養」「正直は最良の策」「楽をするには汗をかけ」等々、全編を流れる精神は、勤勉・誠実・倹約・節制・持続である。われわれ現代人には古びた人生訓に写りかねないが、一方でこれらは普遍の真理でもある。「最短の近道はたいていの場合、いちばん悪い道だ。だから最善の道を通りたければ、多少なりとも回り道をしなくてはならない」(ベーコン)である。
天賦の才能ですべてが決まるのではなく、日々の身辺雑事をおろそかにせず、取るに足らないような問題でも全力で取り組む、そんな「小さなプラスの習慣」を身に付けるかどうかで大きな差が開くこと、世の中の不公平や制度のせいにするのではなく、「自分の敵は自分の中にいる」ことを知り、人生は自分で切り拓くのだということを、多くの例を通じ本書は訴えている。
明治の青年たちが、なぜ「西国立志編」を読んで奮い立ったのか。成熟期を迎えた今の日本と国民に何が必要なのかを考えさせられ、自分というものを改めて見つめ直すことができる一冊。
(小澤孝行)